辻村深月 『かがみの孤城』 感想

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本屋大賞や、その他様々な場面で話題になっていた辻村深月さんの『かがみの孤城』

雑誌でその評判を目にしてからずーっと読みたくて、でもハードカバーより文庫を待った方がいいかなあ…などとやきもきして買うのを我慢していたのですが、

結局ハードカバーで買って読んでしまいました(笑)

実は読んだのは二か月ほど前なのですが、個人的な感想を書いてみたいと思います。

ネタバレするときは事前に注をつけるので、未読でも興味のある方はこのまま進んでいただければと思います。

 

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あらすじ

主人公の安西こころは、中学1年生の女の子。学校の人間関係でつらい思いをして以来、学校に行くことができなくなり、1日中を家で過ごすようになった。

そんなある日、部屋にあった大きな鏡が突然光り出し、こころは鏡の中に吸い込まれてしまう。

目を覚ましたこころを待っていたのは、大きな城と、狼の面をかぶった「オオカミさま」と呼ばれる少女。そして、自分と同い年くらいの6人の子どもたち。

突然わけのわからない世界に呼び出されて戸惑う子どもたちに、オオカミさまは告げる。

この城のどこかに、「願いの叶う部屋」がある。今から1年以内にその部屋の鍵を見つけ出し、中に入った者1人だけ、なんでも願いを叶えることができるのだ、と。

あり得ない事態に半信半疑になりながらも、こうして7人の子どもたちによる、約1年に渡る鍵探しが始まったーー。

感想(ネタバレなし)

そもそもこの本を早く読みたいなーと思っていたのは、この本が「初期の辻村作品っぽいテイスト」で書かれている、ということをどこかで目にしたからでした。

辻村さんは好きな作家さんの1人なのですが、けっこういろいろなジャンルの作品を書かれていて、私はやっぱり初期の作品のミステリのような、SFのようなテイストの話が好きなのです。

なので、きっとこの本も好きなはず!と思い、今回読んでみたのですが。

 

一言で感想を言うなら、期待通り面白かったです。辻村さんらしさが詰まったストーリー展開で、いつものようにあっという間に読んでしまいました。

ただ、文庫になるのを待ってもまあ良かったかな、という印象もあったかなあ。あくまでも個人的な感想ですが。

「今までの辻村作品で一番良い!」という前評判で、ちょっと期待値が上がりすぎていたのも否めません。

もうこれは完全に個人の好みだけども、私は結局のところ、『子どもたちは夜と遊ぶ』とか『スロウハイツの神様』とかの方が好きでした。

 

でも、「辻村さんの作品を一冊も読んだことない」というような人にはたしかにおすすめの作品な気がします。

辻村さんの作風の良さが出ているし、今回の主人公は不登校の女の子だけれども、同じようにつらい思いをして闘っている人たちにも、ぜひ読んでみてもらいたい本だと思いました。

 

期待よりはそんなに…みたいな感想になってしまったけど、、感動して涙したシーンももちろんあり、読後感も辻村作品らしく爽やか。

ではなぜ個人的にそこまで…だったのかと言うと。

辻村さんの書くミステリ作品にはいつもなんらかの仕掛けというかトリックというか、隠された秘密があるのですが、

その仕掛けの中でもけっこう重要なポイントであろう2つのポイントに、わりと早い段階で気づいてしまったから、というのが主な理由かなあ。

 

というわけで、ここから先はネタバレ含む感想になりますので、ご注意ください。

感想(ネタバレあり)

もう一度言いますが(笑)、以下はネタバレになります!

辻村作品をよく読まれる方はわかると思うのですが、辻村さんの描く仕掛けにはけっこう特徴があるので、ファンの方は途中で気づくことも多かったのではないかというポイント。

私が気づいてしまったのは、「7人の子どもたちが実際に暮らしている年代が違う」という点と、

「喜多嶋先生の正体」でした。

 

もちろん、読むからにはいろいろ予想をめぐらせながら読んでいるので、微妙なヒントをもとに気づけて嬉しい、という気持ちもあるのですが、

その反面、最後まで騙され続けてびっくりしたかった、というすごく面倒くさい心理が私にはあるので(笑)、

ここに気づいてしまったことで、この物語から受けるインパクトが少し小さくなってしまったのかも。

 

あと、やっぱり自分がすでにいい大人の年齢になってしまっているせいで、登場人物にそこまで感情移入できなかった面もあるかなあ。

今回は主人公たちが中学生だったので、少なくとも高校生以上の方が世界に入り込める感じはあるかな、と。

 

とかなんとか言いつつも(笑)、

やっぱり読んでいてすごく楽しい本だし、またしばらく経ったら読み返して、きっと何回も読むことになると思います。

仕掛けに気づきながらも、エピローグで「喜多嶋晶子」という名前を見たときは、やっぱり胸に迫るものがあったし、

「闘っている人にぜひ読んでほしい」と書いたけれど、世界は自分が思っているよりずっと広いということを教えてくれて、背中を押してくれる本だと思う。

ラストシーンは今後のこころの明るい未来を想像させてくれるし、やっぱり読後、爽快な気持ちにさせてくれる本は良いものです。

 

今後もまたぜひ、辻村さんにはミステリ作品を書き続けてもらいたいです!

このブログにも書きかけの辻村作品の感想もまだあるので、そちらもまたいずれちゃんと書きたいと思います^^

 

Liebe Grüße,
Natsuru

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