ブルガーコフ 『巨匠とマルガリータ』 感想

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これでもかと続いている猛暑の中、頭を働かせる気力もわかず、

ついついスマホに手を伸ばして暇をつぶそうとする現象に歯止めが利かなくなりつつある昨今ですが、

こんな時こそ室内での時間を有効活用しなくては、と思う気持ちも常にあることはあり、

かれこれ10年ほど(!)本棚に眠らせていた本をついに手に取って読むに至りました。

それが今回ご紹介する『巨匠とマルガリータ』というロシア文学です。

 

以下、ざっくりですが感想やら思ったことやらを書きたいと思います。

物語の筋には多少触れますが、ネタバレと言うほどのネタバレは特にありません。

 

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この本との出合い

実はドストエフスキーの作品なども未だに読んだことがないので、おそらくこの本が私にとって初めてのロシア文学でした。

手に取ったきっかけは学生時代にサークルの先輩が「好きそう」と勧めてくださったからで、

その当時ちょうど池澤夏樹さんが編集を手掛ける世界文学全集が刊行されている最中だったのですが(池澤さん自身の本も、一時期マイブームが来てけっこう読んだ)、

その中にこの作品があったので、興味を持って購入したのでした。

しかしながら600ページに及ぶボリューミーな作品のため、当時少し読み進めたものの、一気読みすることはできず、以後この本は本棚へ…。

でもいつか必ずちゃんと読みたかった作品なので、今回読めて良かったです!

あらすじ

文学作品にはよくあるように、この本もまた作者の生きていた時代や世界(ソ連という社会)への批判や皮肉もこめられた作品なのですが、

その周辺にはまったく詳しくない私にも、物語として楽しむことのできる作品でした。

 

登場人物はかなり多く、いろんなサイドストーリー(と言いつつ、すべてちゃんとつながっている)もあるのですが、

第一部は春のモスクワに悪魔ヴォランドの一味が現れ、人々の目の前で現実に起こりえないような数々の事件を起こし、町を混乱の渦に巻き込んでいくというストーリー。

第二部は、第一部の終盤でようやく登場するこの物語の主人公「巨匠」と、彼の愛人マルガリータがヴォランド一味の協力を得て、これまでの不遇を脱していく、という展開になっています。

そして全編を通して物語の中に巧みに入り込んでくるのが、かつて巨匠が執筆していたポンティウス・ピラトゥスという人物の物語。

ピラトゥスはかつてのローマ総督で、無実と知りながらイエス・キリストの処刑を命じざるを得なかった(と伝えられている)人物です。

一見、物語の本筋とは無関係に見えて、ピラトゥスの物語もまた、物語の最後まで重要な要素として絡んできます。

感想

この物語の魅力のひとつは、池澤夏樹さんも書いているように、まったく先の読めないストーリー展開にあると思います。

ある日突然、二人の男の前に姿を現す悪魔、ヴォランド。

その彼が二人にした恐ろしい予言の実現を皮切りに、次から次へとモスクワを混乱させ、震撼させていく悪魔たち。

とにかく好き勝手にふるまっているように見えるので、物語の終着点が予想できないのですが、

くるくると展開していく物語につい夢中になってしまい、あまり難しいことを考えずにすいすい読み進めていくことができます。

先輩がこの本を勧めてくれたのも、こういうシュールでブラックユーモアのあるような物語が私の好みだとわかっていたからなんだろうなあ、と読みながら納得。

 

もともと筆者のブルガーコフはゲーテの『ファウスト』に影響を受けている部分があり、悪魔の「ヴォランド」という名前は『ファウスト』の登場人物から取ったらしく、

悪魔たちの立ち居振る舞いも、池澤さんが書いているようになんともメフィストフェレス(『ファウスト』に登場する悪魔)的。人間を翻弄しつつも、人の本質や持っている欲に興味を抱いているような節があります。

悪魔の大舞踏会のシーンも、なんとなく『ファウスト』にも出てくる魔女たちの宴、ヴァルプルギスの夜を彷彿とさせるし、

最後まで読んでみて、やはりこの物語も『ファウスト』同様、「救済」が大きなテーマになっているなあ、と感じました。

 

一点、この作品を読むに当たって、イエス・キリストの処刑にまつわる物語はさらっとでも知っておいた方が良いと思います。

私は読みながら、大好きなミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』のことを思い出さずにはいられませんでした。

このミュージカルの中でも、ローマ総督ピラト(ミュージカル上は「ピラト」という役名)がなぜ無実の男を十字架に掛けなければいけないのか苦悩し、処刑後もそのことを後悔して過ごすであろうことが暗示されているのですが、

その姿が『巨匠とマルガリータ』に登場するピラトゥスの姿とも重なって、物語がより印象深いものになりました。

 

純粋なファンタジーとしても楽しめるし、史実に基づいてあれこれ考察することもできるし、やっぱり長く愛される文学作品は読み応えがあります。

物語に込められたすべての仕掛けや背景を理解するには自分の知識が乏しすぎるのが難点だけども、、

外見も中身もボリュームのある本を、あまり敬遠せずにこれからも読んでいきたいなあ、とあらためて感じさせてくれた一冊でした。

たぶん無理だけど(笑)、世界文学全集、いつか全部読めたら素敵だなー。

 

この他にも最近読んだ本があったり、小説、漫画、アニメなどジャンル問わずむかしから大好きな作品についてちゃんとこの場で触れたいなという思いもあるので、

またぽつぽつとでも感想など書いていけたらと思います^^

 

Liebe Grüße,
Natsuru

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