かなりのんびりしたペースでの読書になってしまいましたが、
森見登美彦さんの『有頂天家族』2作目、『二代目の帰朝』を読み終わりました。
本当は1作目から感想を書きたいところなのですが、
諸事情で1作目が手元にないため、こちらから先に感想を書きたいと思います。
(極力避けていますが、ネタバレに当たる表現もあるかもしれないのでご注意ください。)
『有頂天家族』は、前に触れた『夜は短し歩けよ乙女』と双璧をなす、
私のお気に入り森見作品。
一言で言えば、京都でうごうごとしている狸たちの話です。
もっと言うなら、狸と天狗の物語。
主人公は下鴨矢三郎という名の狸で、この物語の語り手は最初から最後まで矢三郎。
腐れ大学生に化けることを日課とし、阿呆の道を突き進む矢三郎はなんとも言えずかわいらしくて、
彼の行動を見ていると、良い意味で気が抜けるような、のんびりした気持ちになります。
矢三郎は四人兄弟の三男で、上から矢一郎、矢二郎、矢三郎、矢四郎、ととってもわかりやすくて助かるのですが、
この兄弟たちがまたそれぞれに魅力的。
立派な父の血を受け継ぎ損ねた、と周りから言われる四兄弟だけど、
それぞれに足りない部分を持っているからこそ、お互いを補い合って生きているのがわかるし、
お父さんの血を四人で分け合った感があるのがとても微笑ましいです。
そんな四兄弟を育てたお母さんももちろん魅力的だし、他にも魅力的な登場人物がたくさんいます。
彼らの織り成すどたばた劇の繰り広げられる1作目に引き続き、
2作目もすごく面白かった!
2作目ということで、勢いは1作目の方が上かもしれないけど、
登場人物も増えて深みが増しています。
副題のとおり、天狗の赤玉先生の息子が英国から帰国するところから物語が始まるのですが、
赤玉先生の跡継ぎをめぐった弁天とのあれこれあり、矢一郎の恋の話もあり。
下鴨家だけでなく、下鴨家と対立する夷川家の狸たちも見どころ満載。
「敵役」と言えばそうなのかもしれないけど、その言動に切なくなるような心情が垣間見える部分もあって、
みんなそれぞれに憎めません。
矢三郎の「元」婚約者だった海星が、矢三郎の前に姿を現さなくなった理由もわかって、
海星のこともますます好きになってしまいました。
かわいくて優しい女の子なのに、この口の悪さがたまらない(笑)
そんなふうに進んでいくこの物語、
ラストに向かって勢いづいていく様は、1作目と通ずるものがありました。
矢一郎の潔さと格好良さにしびれ、
狸も天狗も人間も入り乱れる大騒ぎが痛快だった!
そんな中にも、やっぱり切なくなるようなシーンもあって、
第三部に向けて、またひとつ期待が高まる終わり方だったと思います。
他の森見作品とつながる部分もあり、とにかく大好きな作品です。
今回は小型化(文庫化)を待ちきれずにハードカバーで買ってしまったけど、
小型化したらまた買っちゃうんだろうなあ。。
とっても面白いのでぜひ!
順番が逆になってしまったけど、
またいずれ、1作目の感想も書きたいと思います^^
Liebe Grüße,
Natsuru
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