松屋銀座で開催されている、「熊川哲也とKバレエ展」に行ってきました。
「バレエに愛された男」とは本当によく言ったもので、
こんな文句にも引けをとらない熊川さんの実力、実績のすごさを物語っているなあと思います。
中に入ると、まずは熊川さんがかつて獲得したトロフィーや賞状、
出場したコンクールのプログラムなどが展示されていました。
初舞台のものらしい小人の衣装とか、
こんなものがきちんと保管されているなんてすごいな!と思わされます。
日本人で初めてゴールドメダルを獲得したという、
かの有名なローザンヌ国際バレエコンクールでの演技の映像など、
貴重な映像もいろいろ観ることができました。
バレエの技術的な面についてはよくわからない私でも、
思わずため息が出てしまうような素晴らしい演技。
ロイヤルバレエ学校時代の実技試験の映像なんて本当に秀逸で、
教室の外に他の生徒(と思われる人)たちが群がって熊川さんの試験をのぞいている様子も合わせて、
ものすごく印象的だった。
各公演の衣装も多数展示されています。
Kバレエカンパニー設立前に熊川さんが着た衣装の数々を見るだけで、
熊川さんのたどってきた軌跡を思って鳥肌が立ってしまいました。
プリンシパルにまで上り詰めたロイヤルバレエ団を26歳の若さで退団して、
「若いうちに日本でやるべきことがある」という言葉どおり、その後日本のバレエ界を引っ張ってきた熊川さん。
彼の成し遂げたことの偉大さを思うと、本当に頭が下がります。
べつに自分がバレエをずっとやってきたわけでもないのに、
どうしてこんなに熊川さんに惹かれるんだろう、とも思うんだけど、
並々ならぬ志と、それを実現するだけの自信と才能、実力を持った熊川さんの生き方は、
きっと私にとって憧れそのものだからだろうな、と思います。
こういった舞台を創りたい、こういった振りを取り入れたい、
そう思ったときに、それを実際に形にして他人に伝えるだけの能力があるって、すごくうらやましい。
たとえば、自分の頭の中にすごく良い景色のイメージがあったとして、
それを他人に伝えるのって絵で描いて見せるのが一番手っ取り早いと思うんだけど、
残念ながら画力がないと、せっかく浮かんだ良いイメージを形にして他人に伝えるのってなかなか難しいと思う。
良いアイディアを思いつく才能と、それを形にする才能。
はじめから両方を持ち合わせていて自分のイメージを自分の力で実現させられる人って、
実際はそんなに多くないんじゃないかなって思う。
でも、熊川さんにはそれができる。
そしてそれができるからこそ、自分に課された使命を理解し、それを背負って邁進しているその姿を、
本当に格好いいなあ、と思うのです。
Kバレエ作品の衣装の数々が並ぶ空間は圧巻だったし、
これまでのKバレエ11作品をまとめた映像は本当に素晴らしくて、
いつまででも観ていられるなと思いました。
衣装も本当に間近で見ることができて感動。
『白鳥の湖』の黒鳥、オディールの衣装に数枚赤い羽が混ざっているのも印象的だったし、
『くるみ割り人形』のネズミの衣装もすごかった!
その後は最新の作品、『ラ・バヤデール』と『カルメン』のコーナーになるのですが。
10分ほどで『カルメン』のストーリーを追った舞台映像も、本当に素晴らしかったです。
舞台を観たときの感動がよみがえって、また観たくてたまらなくなってしまいました。
その傍らで、Kバレエスクールのレッスンの映像なども観ることができます。
選抜クラス(?)の子どもたちに、「きれいなものをきれいだなって思う心を持たないとだめだよ」と
さらりと話す熊川さんも素敵だった。
「この人についていきたい」と思わせる風格と確固としたポリシー、こだわりを持っていて、
こういうのを「カリスマ性」って言うんだろうな、と思いました。
必ずしもKバレエに限った話ではないんだけど、
Kバレエを観ているとき、舞台上から両手で抱えきれないくらいの高い芸術性、それに伴う感動が押し寄せてきて、それをどう消化したら良いのかわからないときがあります。
そのときに受ける舞台上のエネルギーや深い感動を表現するには自分の中にある言葉が足りなくて、
受けたものを上手く形にできないもどかしさというか、焦燥感というか。
そんなものを感じたりする。
受けたものを形にするだけでなくて、それをかみ砕いて吸収した上で、
自分の手でしか生み出せない何かに作り替えて、世の中に還元しないといけない。
そういった思いも湧き上がってくるのですが、こういった話はまたいずれ。
「美しい」としか言い様のない作品にこの目やこの手で実際に触れることって本当に大事なことだと思うし、
そんな作品に触れる機会を惜しみなく与えてくれる熊川さんを、今後もずっと応援していきたいです。
決して広いとは言えない会場なのに、とても充実した展示で大満足!
3/9(月)まで開催されているので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください^^
Liebe Grüße,
Natsuru
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