Kバレエカンパニーの新作バレエ『クレオパトラ』、世界初演。
オーチャードホールにて、2017年10月8日(日)公演を観てきました!
(以下、全体の感想を書きますがネタバレなしです)
メインキャストはこちらです(敬称略)
クレオパトラ:中村祥子
プトレマイオス:山本雅也
カエサル:スチュアート・キャシディ
アントニウス:宮尾俊太郎
オクタヴィアヌス:遅沢佑介
ポンペイウス:ニコライ・ヴィユウジャーニン
ブルータス:伊坂文月
オクタヴィア:矢内千夏
一言で感想を言うと、期待以上の素晴らしい舞台でした。
人と一線を画した存在であるクレオパトラの美貌と知性、彼女を取り巻く陰謀と策略、愛し愛された男たち。
カール・ニールセンの音楽と、クラシックバレエをベースにしながらも、古代エジプトの壁画を彷彿とさせるようなエキゾチックな振付。一方、ローマの男たちの踊りの力強さ。
様々な要素が混ざり合い、一瞬たりとも目を放せないとても濃密な作品になっていました。
何より、音楽と振付から醸し出される妖艶さが完璧に私好み。
私が本来ミュージカル『アラジン』に求めていたものは、まさにこういう妖艶さだったな、と感じました。
私はあまり歴史に詳しくないので、クレオパトラ周辺の歴史についてもほぼ忘れており、
今回はちょっと難しそうな話だから大丈夫かな…とも思ったのですが、
場面ごとに展開もはっきりしているし、全体的にとてもわかりやすい舞台で、心配は杞憂に終わりました。
(私のように歴史にあまり詳しくない方は、事前にプログラムなどであらすじや人物相関図を読んでおくとよりわかりやすくなると思います)
クレオパトラを踊られている中村祥子さん。
ぜひ一度生で観てみたいと思っていたので、まさに中村祥子さんと浅川紫織さんという2人のダンサーのために作られたこの作品で拝見できたのは、本当に感無量でした。
クレオパトラの衣裳はこれまでの古典バレエ作品とはまったく異なり、
エジプトの民族衣装を象ったものから、四肢が顕わになるレオタード型のものまで。
その衣裳が中村さんの肉体の美しさを最大限に引き立てていて、
本当に見惚れてしまうというか、「釘づけになってしまう」という言い方をした方が近いかもしれない。
その容姿、表情、立ち居振る舞い、何から何まで人を惹きつける力強いオーラを放っていて、
まさに多くの人たちを魅了したクレオパトラそのものでした。
(後で知ったのですが、中村さんは現在37歳なのだとか。出産も経験されているなんて信じられない体のラインで、やはり磨き上げられた肉体は違うな…と実感しました)
今回の舞台でとても印象深いのは、クレオパトラが「蛇の化身」として描かれているということ。
これについてはプログラムにも記載があり、先月放送の市村正親さんも出演されていた特別番組でも触れられていましたが、
「クレオパトラは、キリストより前の時代の紀元前の人物。それはもはや神に等しい存在」ということで、
古代エジプトにおける神の象徴である蛇の化身、としたのだとか。
クレオパトラの動きや衣裳に垣間見える蛇の姿は、まさに彼女が「人ならざるもの」であることを物語っていて、
これは次の記事でまた詳しく触れたいのですが、特に神殿男娼とのパ・ド・ドゥでは、
ぞっとすらするほどの神性が表現されていたと思います。
もちろん、クレオパトラだけでなく、他の登場人物もそれぞれにとても魅力的。
熊川さんは衣裳や舞台装置だけでなく踊りで「エジプト人」と「ローマ人」の違いを表現したかったということですが、
エジプトのつかみどころのなさ、ローマの力強さ、それぞれの特徴がよく表れていて、2つの国の違いを肌で感じ取れるのも面白かったです。
不思議だったのは、舞台を観ていてふと、まるで古代ローマの円形劇場か何かで作品を観ているような錯覚に陥ったこと。
この時、熊川さんがポリシーとして語られていた、「100年前でも100年後でも成立するバレエを維持する」という言葉をふと思い出しました。
『クレオパトラ』は新作だけれど、この作品は100年前から踊られている、と言われたとしても何の違和感もない。
この舞台は違う時代でも変わらずに観客を楽しませることができる。
振付も演出もとても斬新なのに、そんなことを感じさせてくれる舞台でした。
特別番組で熊川さんが語られていたように、まさに日本人が作る西洋芸術。
原作も音楽も振付も、何もないところからこんな舞台を創り上げてしまうなんて、
熊川さんの才能は兼ねてから存じ上げてはいるけれど、やっぱりまだまだ底の知れない方だなあ、と思いました。
この作品を観る前まで、
「結局、日本発の作品って、歌舞伎などの伝統芸能であったり、漫画やアニメであったり、
日本古来の文化を取り入れたものでなければ本当の意味で海外に通用しないのかな」
と思っていた私だったけど、考え方が変わった。
先日日経新聞に掲載された記事の中で、
「日本人はいつまで、自分たちは外国に引けをとらないか、なんて考えるのかな」
という熊川さんの印象的な言葉があったのですが、この言葉をもう一度深く胸に刻み直しました。
今までいろいろなバレエ作品を観てきたけれど、
『クレオパトラ』はそれらと肩を並べてもまったく引けを取らない作品です。
これもまた次の記事で書きますが、ラストシーンではまったく意図せぬうちに涙が出てきてしまうくらい、心に訴えてくる作品。
もう一度観たい!というのが正直なところですが、
観られなくとも来年の映画館上映で観たいなあ…と思っています!
ここまでいろいろ書きましたが、
もう少し本編に触れながら詳しく感想を書きたいので、それはまた次の記事にて^^
次回の記事はそれなりにネタバレありの予定ですので、ご注意ください。
Liebe Grüße,
Natsuru
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