Kバレエカンパニー『クレオパトラ』感想 -その2-

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Kバレエカンパニーの新作『クレオパトラ』感想、前回の記事の続きです。

今回は物語の内容や演出にも触れていきたいと思いますので、ネタバレも若干含みます。ご注意ください。

(あらすじは知っていて問題ないかと思うのですが、これからご覧になる方は演出など当日のお楽しみに取っておかれた方が良いかと思うので)

 

感想本編に入る前に、当日のオーチャードホールロビーの様子。

『くるみ割り人形』の衣裳が展示されていました^^

ハロウィンが終わるとあっという間にクリスマスムードになるので、『くるみ割り人形』ももうすぐシーズンですね。

クリスマス前にまたKバレエのDVDを観ようかなあと思っています^^

 

というわけで、ここから『クレオパトラ』本編の感想に入ります!

 

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プロローグ

今回の舞台装置の目玉のひとつである高さ4.8メートルの大階段。

その上に凛と佇む、中村祥子さん演じるクレオパトラ。

孤高の人、という表現もぴったり来るのですが、

手足の長さを存分に活かしたその動きから、この時点で彼女が蛇(古代エジプトの王権・神性の象徴)の化身であることが表現されていて、

ぞっとするような美しさでした。

 

そして一度聞いただけで耳に残り続けるニールセンの主題。

熊川さんも「音楽がよくなければ人の心は動かない」と仰っていますが、

まさにこのインパクトのある主題は『クレオパトラ』にぴったりで、

彼女の持つ絶大な権威と芯の強さ、崇高な精神、しなやかさ、女性らしい優しさ、

すべてが詰まっているように思えます。

(実際は『アラジン組曲』と名づけられている曲。曲を聴きながらアラビアの世界を想像しても、心が躍るような曲です)

ACT1 [第1幕]

第1場-A エジプト~王宮の居間~

ここで登場するのが、クレオパトラの弟であるプトレマイオス13世。

彼は王朝の慣例に則り姉のクレオパトラと結婚し、共同で王位に就いているのですが、

この時点ではまだ心身ともに幼い子ども。

事実上実権を握っているクレオパトラとの力の差も歴然で、

クレオパトラが侍女たちと列をなして舞台上に登場した時の無言の威圧感はものすごかったです。

彼女たちからは感情の動きが読み取れず、その中で圧倒的な存在感を放つクレオパトラは、まさに弟を丸ごとのみこんでしまう蛇のようなイメージでした。

 

けれどプトレマイオスが徐々に剣に興味を持ち、力をつけ始めると(この様子もとてもわかりやすく描かれていました)、

やがて姉弟の対立が始まります。

 

一方、ある意味でもっとも印象的な、神殿男娼とのシーンも非常に見応えがありました。

このあたりの音楽もかなり耳に残るし、振付も独特なのですが、

クレオパトラが6人の男娼の中から1人を選び出す場面も迫力がありました。

(個人的にはこの場面含め、もう少し曲とビシっと合うともっともっと良いなあと思う場面がありました。それは舞台が仕上がっていないという意味ではなくて、舞台は「生もの」ゆえに0.01秒のズレとかでも印象が変わってくると思うので、ばっちりかみ合った瞬間を観てみたいな、とも)

 

その後のクレオパトラと神殿男娼のパ・ド・ドゥもものすごいインパクトでした。

(この舞台全体に見られる)官能的な振付はまさに「芸術としての性」を表しているようでとても美しく妖艶で、

同時に「いまだかつて、こんなにも女性が一方的にその場の空気、相手をも支配しているパ・ド・ドゥがあっただろうか」と感じました。

毒薬の入った瓶を手に、時には口にくわえて踊るクレオパトラからは女性の持つミステリアスなオーラがこれ以上ないほどに放たれていて、

彼女のしなやかな動きを観ていると、女性と男性ってこんなにも違う生き物だったのか、と今更気づかされたような思いでした。

 

クレオパトラは度々男に毒薬を飲ませ、最後には一夜を共にしたその男の命を奪ってしまうのですが、

そんなむごい行為ですら、彼女がすると至極当たり前のことのよう。

まるで当然のように1人の男の命を手中に握るクレオパトラの姿は、まさに人間の生死をも操ることのできる神そのものでした。

男が絶命した後の蛇のような去り方も本当に素晴らしくて、恐ろしさすら感じた。

この場面、ストーリー上はなくても問題ない場面のように思えますが、彼女の神性を表すために必要不可欠なものなのだと感じました。

 

第1場-B ローマの戦い

ローマにおける、ポンペイウスとカエサルの戦い。

ちょっとこの前のシーンが衝撃的すぎてこのシーンはあまり印象に残っておらず申し訳ないのですが、、

カエサルに敗れたポンペイウスが、エジプトへ逃亡するシーンです。

 

第1場-C エジプト~クレオパトラの部屋~

対立を続けるクレオパトラ派とプトレマイオス派のもとに、争いに敗れたポンペイウスが現れるシーン。

ローマの軍人が現れた途端、音楽と場の空気が一瞬にして変わったのがとても格好良かったです。

この瞬間、エジプトの地が「ローマ」という異国の空気に満たされた感覚がありました。

 

クレオパトラは傷ついたポンペイウスを受け入れて介抱しますが、

プトレマイオス一派によりポンペイウスは暗殺され、それを目撃したクレオパトラも殺されそうになり、王宮から逃亡せざるを得なくなります。

 

第2場 エジプト~カエサルの部屋~

ポンペイウスを追ってエジプトにやって来たカエサルは、ガイド(案内人)からエジプトの女たちを差し出されます。

キャシディさんのカエサルは座っているだけで抜群の存在感。

この場面の女性たちの踊りも衣裳も個性がありかわいかったですが、

同じ女性でも、やっぱりクレオパトラの存在感はまったく別物。

「絨毯の中に入ってカエサルに会いに行った」という伝説(?)が忠実に再現されていたのがとても素敵だったし、

カエサルが一目で魅了されてしまうのも納得のしなやかな動き。

 

クレオパトラは様々な男性とパ・ド・ドゥを踊りますが、相手によってそれぞれまったく違う印象の踊りになるところも見応えがありました。

カエサルと出会った時は、蛇の舌のように手をちらつかせる動きがすごく印象に残った。

仕草のひとつひとつに、これでもかと言うほど女性の「性」を見せつけられるような感じで、

こんな表現ができるなんて、踊りって、バレエってすごいなあ、とあらためて思うと同時に、

中村祥子さんの、肉体を最大限に使った表現力に感動しきりでした。

 

そしてカエサルとクレオパトラは恋に落ち、カエサルの命をも狙ったプトレマイオスを絶命させ、

クレオパトラは再び王位を取り戻します。

 

カエサルとクレオパトラの関係は、「恋人」というよりはやっぱり「同志」っていう感じがする。

共に強い目的を持ち、その上で手を組んだ関係性であるように、私の目には映りました。

心の強さは2人とも同じで、クレオパトラもカエサルに頼る、ということはしていないような印象。

あくまでも、後のアントニウスとクレオパトラとの関係性を観ていての感想になるのですが。。

 

こうして、カエサルと共にローマへ旅立ったクレオパトラ。

 

例によって長くなってしまったので、、第2幕の感想はまた次の記事で書きたいと思います。

 

Liebe Grüße,

Natsuru

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