毎回感想が長くて失礼します。。
Kバレエカンパニーの新作『クレオパトラ』感想、前回の記事の続きです。
ネタバレありますのでご注意ください。
では早速、第2幕から。
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ACT2 [第2幕]
第1場 ローマ~カエサルの邸宅~
カエサルと共にエジプトからローマにやって来たクレオパトラ。
2人の間にはカエサリオンという名の子どももいて、
第1幕では冷徹なイメージのあったクレオパトラが、妻・母親としての幸せを手に入れ、
立ち居振る舞いもどこか穏やかになったような印象がありました。
この後すぐにカエサルは暗殺されてしまうのですが、そのシーンがとても印象的でした。演出的にすごく面白かった場面。
静か動か、と言われたら間違いなく「静」と言える(どこか穏やかですらある)空気に包まれて、カエサルは命を落とします。
「自分でも気づかぬうちに暗殺されていた」と言っても過言ではなく、
「味方と信じて疑わなかった者に殺された、知らない間に味方が敵になっていた」という史実を暗に示しているのかな、と思いました。
カエサルが絶命した瞬間、舞台上に大きく飾られていたカエサルの肖像がはらりと落ちる場面に、権力の儚さを感じました。
第2場 ローマ
カエサルの暗殺に嘆き悲しむクレオパトラは、カエサルの配下であったアントニウスに引きとめられながらも、カエサリオンを連れてエジプトへ帰っていきます。
宮尾さんのアントニウス、傷心のクレオパトラが思わず身を預けたくなってしまうような安心感がありました。
振付も、大柄な宮尾さんの特徴が活きるものになっているように個人的には感じた。
カエサルの養子であり後継者のオクタヴィアヌスもここで登場。妹のオクタヴィアと結婚するよう、アントニウスに迫ります。
オクタヴィアヌスとオクタヴィアは、なんだかとても正統派というか、
陰謀と策略に満ちたこの舞台上では珍しい、竹をスパッと割ったような性格に感じました。裏表がなく、後ろめたいことも何もない、という空気。
遅沢さんのオクタヴィアヌス格好良かった(´v`*)私遅沢さんの踊りが好きだなあ、と今回観てあらためて認識しました。
矢内さんのオクタヴィアもかわいらしかった! 幸福感に満ちた表情と踊りが印象に残りました。(結局アントニウスの心をつかむことはできずかわいそうだけど…)
そして、アントニウスとオクタヴィアは結婚。
このお祭りのようなシーンの最後でブルータスが処刑されるのもまたすごいというか、
敢えてここに持ってくるところに、何らかの演出の意図を感じました。
私は次から次へと台頭する権力の移り変わりの速さを感じたのですが、もっと別の意味もこめられているかも。
第3場 ローマ
オクタヴィアと結婚したもののクレオパトラのことが忘れられず、妻を残してエジプトへ出発するアントニウス。
その裏切りに激怒し、エジプトに宣戦布告するオクタヴィアヌス。
やっぱりこの作品におけるオクタヴィアヌスの行動は単純でわかりやすいな、と思います。
それだけに、もし彼がクレオパトラに恋をしていたらどうなっていたのか、ちょっと見てみたくもあります(笑)
第4場 エジプト
クレオパトラがアントニウスを待つ船を表す舞台装置がとても抽象的で面白かった。こういう舞台美術も本当に興味深い造りになっています。
クレオパトラとアントニウスのパ・ド・ドゥには、クレオパトラの深い安らぎを感じました。
ポンペイウスやプトレマイオス、カエサルなど、かつて共に生きた男性たちを失い、傷つき疲れ果てた中で、
クレオパトラが策略や計算を捨て置いて愛したのは、唯一このアントニウスだったのかな、と思うような。
アントニウスの側にも懐の深さを感じたし、この2人のパ・ド・ドゥには純粋な愛を感じました。
クレオパトラがようやくつかんだ幸せや安らぎも束の間、オクタヴィアヌス率いるローマ軍が攻めてきて、アントニウスはこの戦いに敗れます。
敢えてアントニウスを殺すことはせず、その場から立ち去るオクタヴィアヌス。
屈辱を受けたアントニウスは自害を図り、その時、クレオパトラが血相を変えて駆けつけてきます。
ここで再び流れるニールセンの主題。
息絶えるアントニウスを前に今までとは別人のように激しく取り乱すクレオパトラの姿を観て、
私はクレオパトラを、「男性を介し、神から人間になった女性」なのだと解釈しました。
そしてニールセンの主題が流れた瞬間、ぐっと涙がこみ上げてきて、そのことに自分でも驚きました。
クレオパトラに同情してとか、悲しくてとかではなくて、
ただ演出の格好良さと、
舞台にしてみればたった2時間ではあるけれど、クレオパトラの濃密な半生を共に生きられたような感覚を味わえたことへの感動のせいかな、と今になって分析してみるけど、
分析する必要もないような気もしています。
(ちなみに、他の方の感想を見てみてもここで涙が出てきた方は多いようです)
一番好きだったのは、かつてクレオパトラと深い関わりを持った男たちが、それぞれ剣を手に舞台上に現れる演出。
クレオパトラの傍らを通り大階段を上っていくその様子に、クレオパトラが生き抜いた時代、年月、彼女の築き上げた歴史を感じて心が震えました。
そして自らも大階段を上がり、潔く朽ち果てるクレオパトラ。
その最期を見届けた時、なんとも言えない満足感がありました。
クレオパトラと一緒になって、その時代を生き抜いた!という達成感みたいなもの。
「殺人が許されるのは劇場の中だけ」と熊川さんも仰っていますが(これはちょっと極端な表現かもしれないけれど)、
舞台上では、人は本来の自分とはまったく違う人生を生きることができる。
演じている役者さんだけではなくて、私たち観客も、ある役に共感を覚えたり反感を抱いたり、自分の姿を重ねてみたりして、
舞台が上演されている間だけは、現実ではありえないような人生を生きることができ、
やっぱりそれが、舞台の醍醐味なのだと思います。
スクリーンの中の映画を観ることや、本を読むことでは得られない、
生身の人間が目の前で演じているという臨場感。
舞台も客席もその場かぎり、その時間だけの空間で、
まったく同じ舞台もまったく同じ客席の空気も別の日には存在しない。
私は同じ作品をリピートすることが多いので「また観るの!?」と周りから突っ込まれることもしょっちゅうですが(笑)、
本当にこの、「生もの」感がたまらないのです。
そして今回あらためて、私って本当にバレエが好きなんだなあ、と実感しました。
ストレートプレイとかってよっぽど台本がよくないとやっぱり途中で飽きちゃうことが多いんだけど、
バレエはまったく飽きない。ずーっと観ていたい!と思う。
踊りが好きなのもあると思うけど、バレエ独特の美しい動きが特に好きなのかもしれません。
今回のクレオパトラ、
『シンデレラ』や『カルメン』など、今まで熊川さんが手がけた作品を超える女性のタイトルを、ということで選ばれた人物だそうですが、
私だったら誰を選ぶかなあ…と1人あれこれ考えて楽しんでいます(笑)
あと、勝手に今後Kバレエで観てみたい演目も考え中(笑)
アーサー王好きとしてはグウィネヴィアとランスロットのドラマなんかも観てみたいですが、
若干ストーリーがマイナーかなあ。。
と、これからもあれこれ妄想したいと思います(笑)
もともとバレエダンサーとしての熊川哲也さんを観るためにKバレエを観始めた私ですが、
今ではすっかり芸術家としての熊川さんの活躍が楽しみで仕方なくなっています。
もちろん、踊られる機会があれば今後もぜひ観たいなと思ってはいますが、
熊川さんの演出された舞台を観ること自体が本当に楽しみ。
カーテンコールでもチャーミングな笑顔を見せてくださった熊川さん、
これからもぜひ、心が躍る新作を生み出していただきたいです。
長くなってしまいましたが、『クレオパトラ』感想は以上です。
初めての舞台って本当にその瞬間しかないので、これから初見を迎える皆さまがとっても羨ましい(笑)
でもまた生でも映像でもこの作品を観る機会があったとしたら、
今度はもっと別の見方でこの物語を深く味わいたいなと思います(´v`*)
Liebe Grüße,
Natsuru
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