森見登美彦さんの『恋文の技術』を久々に読みました。
今回で2回目。
この作品は最初から最後までずーっと書簡体で書かれています。
京都からはるばる能登半島まで出向き、クラゲの研究をしている大学院生、守田一郎が
親友や先輩、家庭教師をしていた男の子や自分の妹、
そして作家の森見登美彦氏に宛てて書いた手紙で物語が構成されています。
読者が読めるのは主人公、守田一郎の手紙のみですが、
その文面から、それぞれの文通相手の手紙の内容も十分に想像できます。
本当に「手紙」なので、まったく堅苦しくない文体でさくさく読めてしまう本。
森見さんの作品特有の、ばかばかしくて笑っちゃうようなエピソードもたくさん散りばめられているけれど、
想いを寄せる伊吹夏子さんへ向けた恋文をなんとか完成させようとする主人公の姿は、
なんだか愛しくていいなあ、と思う。
特に第十一話、「大文字山への招待状」は初めて読んだとき、ざわっとするようなわくわく感がありました。
今までのあれやこれやがつながって、終盤へ向けて一気に盛り上がっていく感じ。
そこから最終話、「伊吹夏子さんへの手紙」へつながるところが最高です。
個人的には第九話の、「伊吹夏子さんへ 失敗書簡集」もかなり好きなのですが(笑)
そんなふうに内容も十分楽しめるこの作品ですが、
今回あらためて読んでいて、「季節の表現」がとっても素敵だなあ、と思いました。
季節ごとに変わる空の感じとか、肌で感じる温度。
臨場感もあるし、自然体なんだけどきれいな表現をする作家さんだなってしみじみ思う。
能登にただよってくる初夏の気配や、夏の夜に吹く涼しい風。秋の高い空。
書かれているのはごくごく当り前のことかもしれないけれど、そういったものを作中でちゃんと表現するかどうかで、
物語の温度や肌触りってずいぶん変わるんだな、と勉強になりました。
やっぱり森見さんの作品は味わい深いです。
他にもおすすめの作品がたくさんあるので、また少しずつ紹介していこうと思います^^
Liebe Grüße,
Natsuru
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