ネタバレだらけの、そして同じアイキャッチを使いまくりなオペラ座感想、その5です。。
今回でようやくクライマックス!
第二幕の、クリスティーヌがファントムにさらわれてから。
<ACT.2>
★地下の迷路
ようやく怪人のいるところまで、マダム・ジリーがラウルを案内してくれます。
それまでは「勝ち目などないから闘うのはやめなさい」と警告していたマダム・ジリー。
ラウルたちの身を案じてというよりは、ファントムに危害が及ばぬように警告していたのでしょうが、
クリスティーヌがさらわれてさすがに静観をやめたようです。
ラウルとマダム・ジリーが地下室に向かう途中にすれ違うファントムの手下みたいなのは何者なのかいつも謎。。
だけどこのぎょっとする感じがいい味出してるなあ。
★怪人の隠れ家
舞台上でクリスティーヌに仮面を剥がされた後とその前で、
ファントムの演技(うたい方)が明らかに変わっているのが今回印象的でした。
今まではどこか「人ならざる者」という、神格化されたようなイメージがぬぐえなかったファントムだけど、
このシーンからは怒りとコンプレックスを抱える人間の男、という印象。
そしてここから、クリスティーヌのファントムに対する感情も変わります。
恐怖、畏れから憐憫、哀しみ、そして怒り。
こんな形でしか愛情を表現できないファントムにもどかしさを感じて出るのが、
「醜いのは顔ではなくあなたの心」という台詞なのでしょう。
そしてここにラウルがやって来て、物語は最終局面。
ファントムはラウルの首に縄をかけ、
「俺を選ばなければこいつを殺す」とクリスティーヌに言い放ちます。
対するクリスティーヌの「悲しみの涙 今憎しみに変わる」という台詞を皮切りに、
3人それぞれが心の中の想いを吐露。
ここでクリスティーヌが怒りを感じているのは、
「ファントムは私を舞台に上げるために、そして私の愛を勝ち得るために殺人まで犯したけれど、
そんなことをしなくても(そんなことさえしなかったなら)私の心はずっとファントムのものだったのに」
という点でだと、個人的に思っています。
それほどまでに、かつて「音楽の天使」に心酔していたクリスティーヌ。
けれどファントムは醜い顔に対するコンプレックスゆえかその愛を疑い、
クリスティーヌを自分のもとへ縛りつけておくために、罪を犯してしまった。
それこそが、クリスティーヌの目をラウルに向けさせるきっかけとなってしまったのだと思います。
だんだんとファントムのすることがエスカレートし、このままでは自分も殺されてしまうかもしれない、と恐怖を感じるクリスティーヌに、
「きみを守る」とちょうど良い(と言うとちょっと語弊ありですが)言葉をかけて、絶対的な安心感を与えてくれたのがラウル。
クリスティーヌはファントムに向けたような愛をラウルには感じてはいないと思うのですが、
やはりクリスティーヌの理性の部分が、危うい橋を渡ることなく、感情を抑えてラウルと共にいることを選んで、
それゆえの「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」だったのだと思います。
ファントムに出会ってからラウルと再会し、ここへ至るまでの様々なことを思い出し、
最後にクリスティーヌの心がたどり着いたのは、
「音楽の天使」に心酔した頃の懐かしい「エンジェル・オブ・ミュージック」の旋律と、
「むかしはあなたに心底、心を捧げていた」という事実。
そしてその愛を疑い続けたファントムに向かい、
クリスティーヌは「今見せてあげる 私の心」と、真実をさらけ出すことを決意します。
この時クリスティーヌは、ラウルを助けたいとか、もはやそんなことは考えていないと思うのです。
第二幕でクリスティーヌの感情が100%理性に勝る瞬間、
最後はこの場面だと思います。
自分がどんなにファントムのことを愛しているか。
彼の犯した罪のこともこの瞬間だけは忘れて、
ファントムに口づけ、抱きしめることで、クリスティーヌはそれを表現したのです。
そしてファントムもここで初めて、クリスティーヌの深い愛に気がついたのだと思います。
こんなにも愛してくれていた彼女の愛を疑い、取り返しのつかないことをしてしまったことに気づき、
呆然としているような姿。
クリスティーヌに手を伸ばそうとするも、抱きしめ返すことのできなかったその姿に涙が出ました。
そしてこの愛の告白を受け、ファントムはクリスティーヌとラウルを解放。
ここで猿のオルゴールが動き出すのですが、
第二幕の冒頭であんなに大勢でうたわれた「マスカレード」を、たった1人でファントムがうたう姿は本当に切ないです。
そこへ、不意に戻ってきたクリスティーヌ。
ファントムに指輪を差し出します。
ここで、この指輪はそもそも誰のものだったかが鍵になってくると思うのですが、
四季版ではラウルがクリスティーヌにあげた=クリスティーヌのものになった指輪ということで、
クリスティーヌはファントムに指輪を返したわけではなく、
贈り物として捧げた、という解釈ができると思います。
心からファントムを愛している、その愛の証として。
…であると、個人的には思います。
ここでファントムが口にする「クリスティーヌ、アイラブユー」という言葉。
第一幕のラウルの告白と比較すると、
心の深い場所から絞り出すようなかすかな声。
けれどそこに純粋にクリスティーヌを愛した彼の気持ちがこめられていて、
この世でもっとも切ない愛の告白に思えます。
地下室を去って行くクリスティーヌとラウルがうたうのは、「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」。
これも横浜公演からのようですが、
前までは2人でずっと一緒にうたっていたのが、掛け合いのようなうたい方に変わりました。
なんかちょっと新鮮でよかった。
ラスト、ファントムは「我が愛は終わりぬ」とうたい上げ、
仮面だけを残し、オペラ座の地下室から姿を消します。
そこに一番初めに到達するのが、最後までストーリーの本筋にあまりからんでこなかったメグである、
というのがまた良いスパイスになっていて、
これまで舞台上では語られてこなかったオペラ座の物語、これから紡がれる物語を無限に想像させてくれます。
(前述のとおり、続編の『ラブ・ネバー・ダイ』はないものと思っているので。。)
非常に長くなりましたが(笑)、そんなことを考えながら観ていた横浜公演でした。
自分の中では「クリスティーヌは100%ファントムを愛していた」という結論が出てすっきりしたし、
ファントムはラウルにクリスティーヌを奪われたような形で幕が閉じるけど、
人間はどうしてもディオニソス的なものに惹かれてしまう性を持っていて、
本当の意味でアポロン的なものの方が勝るということはないのではないか、とも思った。
冒頭のオークションのシーンを思うと、
ファントムのもとを離れたクリスティーヌがその後心底幸せな生活を送ったかと言うと、
やはりそうではないように思う。
時折何かに取りつかれたようにファントムのことを語り出すのは、
ラウルと結婚をした後でも変わらなかったのではないかと。
(ラウルがつくづくかわいそうだけど。。)
かと言って、ラウルがクリスティーヌの前に現れることさえなければ、クリスティーヌは一生ファントムとオペラ座の地下で暮らしたかもしれないけど、
それが幸せかと言うとそうでもない気がするし。。
でも、精神的にはその方が満たされたかもしれないな、とも思います。
こんなにいろいろ考える余地を与えてくれる作品もそうないと思うので、
やっぱりこのあたりがオペラ座にリピーターが多い理由なのでしょう。
私もこれで最後の観劇になるとも思えないので(笑)、
また時が経ったらぜひ観に行きたいと思います!
関係ないけれど、2018年に『CATS』が東京に戻ってくるとか!!
オペラ座以上に通い詰めた作品なので、意外と関東に戻ってくるの早かったなあと思ったけど、
しっかり5、6年は経ってるらしくてその事実に驚いた。。
まだちょっと先だけど、今から楽しみです(´v`*)♡
オペラ座感想、長々とおつきあいいただきありがとうございました!
横浜公演からの変更点とかその他もろもろ、こちらのブログを参考にさせていただきました。
私の長い感想よりよっぽど詳しくまとまっていて読み応えがあったので、
興味を持たれた方はぜひご覧ください^^
Liebe Grüße,
Natsuru
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