プラネタリウムと言えば、イメージする季節は夏でしょうか、冬でしょうか。
そもそも夏か冬に限定してしまうのが間違っているかもしれませんが、
私にとってはプラネタリウムにぴったりの季節はなぜか夏か冬のイメージで、
とりわけ冬がしっくりはまる気がします。
冬は空気が澄んでいて、夜空に見える星も多いからなのかなあ。
そんなわけで、毎年この季節になるとなんとなく読み返してしまうのが、
いしいしんじさんの『プラネタリウムのふたご』という本。
いしいしんじさんは数年前に後輩がすすめてくれた作家さんなのですが、
一番最初に『ぶらんこ乗り』を読んだ時は、ちょうど頭がガチガチに固まっている時期で、
その枠にとらわれない文章と物語の内容にずいぶん戸惑ったものでした。
ガチガチの頭が『麦ふみクーツェ』でわりとやわらかくなって、
なんとなくいしいさんの世界観がわかってきた頃に読んだのが、この『プラネタリウムのふたご』。
今挙げた3冊の中では一番普通に読める物語である気がするので、
もしかしたらこの本を一番最初に読めば、いしいさんという作家さんに対する戸惑いも少なかったのかなあ、とも今は思うけど。
とても大切なことがたくさん、まったくお説教めいた感じではなく書かれていて、
とても、とても大好きな本です。
舞台は大きな化学工場に取りまかれた小さな村。
工場の煙突からもくもくと吐きだされる灰白色のもやと、そのてっぺんについた強力なライトのせいで、
村は一年じゅう白夜の中。
村人たちは星空を見るために、泣き男と呼ばれる解説員の住むプラネタリウムへ足を運ぶのを日課にしていた。
そのプラネタリウムに、ある日突然現れた銀髪のふたごの赤ん坊。
彗星の名前にちなんで「テンペル」、「タットル」と名づけられた2人は、
泣き男のもとですくすくと成長していく。
しかし、14歳の時に村に手品師の一座がやって来たことをきっかけに、
いつも一緒だった2人は別々の道を歩むことになり―。
と、いうのが大まかなあらすじ。
物語の中ではいろんなことがいろんなタイミングで起こりますが、
最後まで読むと、すべての出来事が巧みにつながっていることがわかります。
別々の道を歩み始めたテンペルとタットルにそれぞれ起こる出来事さえ、
ちゃんとつながっているんです。
一度読んだだけでは気がつかない部分もあるかもしれないけど、この構成が素晴らしいと思う。
いろんな人に読んでもらいたい本ですが、個人的には
「誰か大切な人をなくした人」に読んでみてほしいな、とずっと前から思っています。
特に「氷山」や「水」について語られる箇所を、大切に読んでほしいです。
いしいさんの本は表現やネーミングセンスなどが独特で、
慣れないうちは「???」と思うこともあるかもしれません。
ぜひ、頭と心をやわらかくして読んでください。
きっと何か、心に響いてくるものがあると思います。
Liebe Grüße,
Natsuru
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