しんみり。
お見送りのみなさんに手を振り、
みなさんから見ればゲートの向こうに消えたはずの私たちはその感情に浸ろうとして、
「飛行機まにあわないかも!」
という潤の唐突な爆弾発言に一気に現実に引き戻された。
どうやらちょっと時間に余裕があったのをいいことに、私たちは空港でのんびりしすぎたらしい。
「早く早く!」
私たちは焦り始めた。
あんなにしんみり別れておいて、「飛行機乗れませんでした」なんていう展開は許されない。
急がなくてはいけないのに、こんな時になぜかレオナのペンケースが手荷物検査で引っかかった!
係の人の前でペンケースの中身を取り出して見せることを余儀なくされたレオナの姿を、
祈るような気持ちで見つめる潤と私。
数秒後、レオナが無事に関門突破! 荷物を抱え込んでダッシュ!!
当り前の話だけれど、なんとか飛行機に間に合った私たちだった。
遅ればせながら、ここで私の留学生活を語る時に絶対にはずせない2人の友人をご紹介。
言わずもがな、タイトルになっているレオナと潤。
同じ大学・同じ学科のこの2人は、この時点ですでにとても仲の良い友人だった。
まずはペンケース事件が記憶に新しすぎるレオナ。
背の高い美人で、黙っていれば大人っぽくて声をかけづらい雰囲気を醸し出しもするんだろうけど、
中身はものすごく面白くて気さくな子。
他人への気遣いも人一倍で、同性からも異性からも慕われる素晴らしい人格の持ち主。
次いで潤。
英語が堪能な彼女は人見知りせず、社交性抜群。かつ、なかなかの酒豪。
昭和めいた語彙を多用し、親父ギャグをこよなく愛すという謎の特性を持ちつつも、
実は家事や料理が得意という家庭的な一面も兼ね備えた素敵女子。
この2人と私が同じ大学に留学することになったのは、実はまったくの偶然だった。
レオナに至っては、留学試験の時に希望の大学を書き間違えてこうなったという漫画のようなエピソードも持っているけど、
何はともあれ、私たちは1年間の留学生活を同じ場所で過ごすことになった。
大学に入るまで海外になんて一度も行ったことがなくて、留学前にたった1回ドイツ旅行をしたことがあっただけの私に、
2人の存在はどんなに心強かったか知れない。
気心の知れた3人で並んでいたからか、
飛行機に乗っても私たちにはこれから1年間留学をするという実感がまるで湧いていなかった。
それでも各々、家族や友人からもらった手紙を読む間は思わずじーんとしてしまった。
飛行機はどんどん、私の生まれ育った場所から遠ざかる。
遠い異国の、見たこともない町へ行く。
この時にもらった手紙やものはひとつ残らず、今でも私の宝物だ。