2006年4月3日、月曜日。
今日からいよいよ、大学での語学講座がスタートする。
これは各国からの留学生用に大学が開講してくれる特別講座で、
約3週間、主にドイツ語会話を学ぶ講座。
大学でのその他の授業は、この特別講座が終わった後に始まることになっていた。
上級、中級、初級とクラスが分かれていて、午前中はクラス分けのペーパーテスト。
テストは9時開始、ということでけっこう早目に大学に向かったのだけれど、
まったく時間通りには始まらず、ドイツってこんな感じなの?と意外に思った。
肝心のテストは、思っていたよりは簡単なものでほっとした。
お昼に外でピザを食べて戻ってくると、クラス分けの結果が発表されていた。
私は中級のクラスに配属され、レオナと潤も同じクラスだった。
このクラスは一応3、4年ほどドイツ語を学んだ学生向けらしく、
そんなに長くドイツ語を学んでいない私たちは戦々恐々としながら教室へ。
(下の写真は、語学講座の行われる校舎。図書館あり)
教室へ行ってみると、このクラスはアメリカ人、イタリア人、そして私たち日本人の
3国籍の学生で構成されているらしかった。
アメリカ人は、昨日友達になったリンジーと、こちらは初めて話すエベリー。
イタリア人は、フランチェスカ、レティシア、エレナ。
日本人はレオナ、潤、私、そしてもう1人、
アイヒシュテットに到着したばかりのリョウさん。
リョウさんはこの時すでに私たちと同じ大学の大学院生で、後にとても仲良くなったのだけれど、
この時はまだ未知の存在だった。
ドイツに来て初めての授業。
緊張する私たちの前に現れたのは、ベアトリクスという名前の、太陽みたいに明るい女の先生だった。
「私のことはトリクシーって呼んでね!」
と言って、話す時も敬語じゃなくていいから、とつけ加えた。
ドイツ語には、日本語のように敬語と、自分と対等な人に対して使う言葉があって、
それぞれ人称や動詞の語尾が変わってくる。
たとえば、英語だと誰に対しても「you go」というところが、
ドイツ語では敬語だと「Sie gehen(ズィー ゲーエン)」、
対等な立場だと「du gehst(ドゥ ゲースト)」といった具合に。
敬語を使ってしゃべることを「Siezen(ズィーツェン)」、
対等な言葉を使うことを「Duzen(ドゥーツェン)」と言って、
通常、学生同士なら年齢関係なく「Duzen」で構わないが、自分より年齢や立場が上の相手には、
向こうから「Duzenでいいよ」と言われないかぎり、「Siezen」を使う。
そこをトリクシーは、「Duzenで話そう」と言ってくれたのだ。
日本人の私にとっては、何もかもが新鮮だった。
正直、DuzenよりSiezenの方が動詞を変化させずに原形のまま使えばいいから楽、という自分自身の心の声もありながらも(笑)、
そんなふうに親しみを持って接してくれるトリクシーの存在がありがたかった。
この日の授業では、とりあえず簡単な自己紹介。
トリクシーや他の人が発言している時のイタリア女子の相づちがすごくて、これもまたかなり新鮮だった。
そこ口挟んでいいんだ、みたいな(笑)
「東京出身」と言うだけで、「えーっ! 東京ってすごく大きな町じゃない!」などなど。
たしかにものすごく混み合った都市ではあるけれど、東京って外国人からはそんな壮大なイメージなのか。
ペアワークでは、イタリア人のフランチェスカとペアになった。
彼女はもう5年もドイツ語を学んでいるらしく、やっぱりペラペラ。
だけど優しく、しどろもどろの私の言いたいことをくみ取ってくれてありがたかった。
どうなることかと思った授業も、こうして楽しくスタートを切った。
早くみんなと、思うように会話できるようになりたい。そんな思いを、また新たにしたのだった。