辻村深月 『名前探しの放課後』 感想

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12月になったらあれやこれやまとめてブログを書きたいと思っていたのですが、なかなかまとめられずもはや年末…。

書きたいことはいろいろあるのですが、実はドイツ留学記をライブドアブログから鋭意移転中でして、

メカ音痴の私はアナログ作業なのでそれに時間がかかっております。。

…が、合間に読書もしているので、今日はその感想を^^

ネタバレがある時はここからネタバレ、と書くので、辻村さんの作品を読んだことのない方も安心して(?)進んでいただければと思います。

 

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辻村深月さんの作品

以前『スロウハイツの神様』についても感想を書いたことがあるのですが、最近の作品は全然読めていないものの、私はひとむかし前の辻村さんの作品がとても好きで、定期的に読み返したりしています。

個人的には女子向けの作品が多いかな、という印象ですが、

登場人物がたくさん出てくる話でもそれぞれの個性が光っているので容姿や雰囲気を想像しやすく、

前にも書いた気がしますが、良い意味で「小説なのに漫画を読んでるみたい」な感覚ですいすいと読めてしまいます。

 

最近の作品には全然詳しくないのですが、初期の作品の傾向はミステリ。たまにSFっぽさも混じるかな?という感じ。

何冊か読むとなんとなくパターンがわかって展開が読めてしまうこともあるにはあるのですが、

しっかり張られた伏線が鮮やかに回収されていく様子はとても気持ちが良くて、最後まで読んだ後、もう一度読み返したくなってしまう作品ばかり。

 

最近、「この本は名作!」という特集があったり、「名作のあらすじ・書評」がまとめられている雑誌を眺めるのがすごく好きで、

その中で、新作の『かがみの孤城』を読みたくてたまらなくなりました。

…が、単行本で文庫化はまだまだ先なのでどうしようかなあ…と迷い、迷っている間とりあえず家にある辻村さんの作品を読もう!ということで今回の『名前探しの放課後』を数年振りに読むことにしたのでした。

『名前探しの放課後』

あらすじ

高校生の依田いつかは、ある日突然、奇妙な違和感に襲われる。

ついさっきまで1月だったはずなのに、景色が、気候が、そして自分を取り囲む環境が、3ヶ月前の10月に戻っている――。

たった1人、1月の記憶を持ったまま過去に戻されたいつかは動揺し、

タイムスリップ関連に詳しい同級生、坂崎あすなに相談を持ちかけ、記憶の中にある暗い未来を打ち明ける。

「今から俺たちの同級生が自殺する。でも、それが誰なのか思い出せないんだ」

 

今から1月までの間に自殺をする同級生は誰なのか。

自殺を止めるため、何としてもその人物を探し出さなければいけない。

親友たちを巻き込んで、いつかたちの「自殺してしまう誰か」探しが始まった。

この本を読むにあたって

辻村さんの作品は、作品同士にどこかしらつながりがあるものが多く、

いろいろ読んでいると、「この作品で主役だった人がこの作品にもちょっとだけ出ている」というスピンオフ的な楽しさを味わうこともできます。

中には他の作品を読んでいなくても問題なく読めるものもあるのですが、『名前探しの放課後』に関しては、

これより前に出ている作品を先に読んでおくことを強く推奨します。

これより前に出ている作品とは、具体的には以下の作品になります。

①『冷たい校舎の時は止まる』

②『子どもたちは夜と遊ぶ』

③『凍りのくじら』

④『ぼくのメジャースプーン』

⑤『スロウハイツの神様』

全部読んでいるのが理想ですが、①と⑤は読んでいなくてもまあ問題はないかな。

でもできれば②~④は読んでおいていただきたいです。

更にこの中で絶対に読んでおいてもらいたい1冊があるのですが、それを言うとそれだけでちょっとしたネタバレになりそうなのでここではまだ触れません(笑)

『冷たい校舎の時は止まる』は他の作品とがっつりリンクしている感じはあまりないのですが、

「同級生の誰かが自殺したはずだけれど、顔も名前も思い出せない」

という展開が『名前探しの放課後』と似ていて、だけどもストーリーは全然違う、という点で楽しめるので、そういう点で読んでおくと良いかな、と。

辻村さんの作品はこのブログでは『スロウハイツ~』しか感想を書けていないのですが、

順番ばらばらになってしまうけど、追って他の作品にも触れてみたいと思います。

感想(ネタバレなし)

個人的には、もともと読みやすい辻村さんの作品の中でも更に上位に入るくらい、読みやすい作品だなと思います。

高校生の目線で話が進んでいくので、大人が読むときっと「学校ってこういう感じだったなあ」と懐かしくなる部分があるし、

学生さんにも読みやすいであろう作品。

それぞれの章のタイトルが既存の小説のタイトルになっていて、各章のタイトルの横に小さく(タイトルになっている)既存の作品についての説明が入っているのですが、これもけっこう好きな演出です。

 

私がこの作品を読んだのは今回で2回目ですが、

1回目の時も楽しめたけれど、結末を知ってから読むと1回目の時は気づいていなかった伏線も楽しめて、とても面白く読めました。

途中、早く展開してほしくて(笑)早く進まないかな…と思うところもあるんだけど、

もちろんそこも含めて登場人物の心の変化や背景などを深く感じ取ることができて、上手く読ませるなあ、と感心してしまう。

ラストの種明かしの章には、謎が紐解かれると同時に景色がぐんぐん変わっていくような気持ちの良い疾走感があって、私は辻村さんのこういう書き方が好きだなあ、と思ってぐっと来ます。

このラストのすべてが一気に紐解かれていく様子、少し『スロウハイツの神様』にも似ているけれど、スロウハイツもあの展開がすごく好きなんだよね。

読後もとても爽やかで、気持ちの良い青春もの(と言いつつ、ミステリでもありSF感もあるのですが)を読みたい方にはおすすめの1冊です^^

 

 

というわけで、以下ネタバレの感想になります。

これから本作を読まれる方はご注意ください。

 

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感想(ネタバレあり)

この作品の主役はいつかとあすなではあるけれど、この作品をより魅力的にしてくれているのはやっぱり2人を取り囲む友人たちの存在。

この作品を読んでから『ぼくのメジャースプーン』を読むと、また違った感慨があります。

そしてこの『ぼくのメジャースプーン』こそ、この作品を読む前に絶対に読んでもらいたい作品。

私は最初、秀人と椿ちゃんの正体にまったく気づかなくて、初めて「あれ」と気がついたのは、

「ノートにウサギのシールが…」という描写があった箇所でした。

そこから「もしかしてこれは…」と思って読んでいくと、次々と確信を持てる描写があって。

そして秋山先生まで出てくる。

これはメジャースプーンの読者への、ある種、ご褒美のような作品だなあとも思います。

秀人と椿ちゃんが特殊な事情を抱えながらも元気な姿を見せてくれていることも嬉しいし、他の登場人物も、しっかりメジャースプーンに出てるんですよね。それに気づいた時、また驚きと喜びがありました。

注意深く読んでいると、椿ちゃんと友春は絶対に同じシーンには出てこないこともわかるし、そういう点に気づくとあらためて作品同士のつながりを感じる。

 

2回目の読書であらためて、登場人物一人ひとりへの愛着が湧いて、

第十章「青い鳥」の友春が教室から駆け出すシーンからは、涙が止まりませんでした。

こういう時の涙って不思議なんだけど、

「何かが悲しくて」とか「感動して」とか言うよりは、「心が動いた」ことによる涙なんだと思う。

「心が動いた」ことを「感動した」と言うのかもしれないけど(笑)、なんか「感動」って言うと独特のニュアンスがある気もするので、その一言ですませたくないなあ、って時がけっこうあるんですよね。

この友春のダッシュからラストまでの、場面がぽんぽん転換して今までの種明かしがされていく流れが本当に痛快で、本当にすごく好きなシーン。

 

いつかが主人公でありながら、彼の考えや計画をここまで明かさずに話を持ってこられるのがすごいと思うし(あすなというもう1人の主人公がいるからこそできることではあるけれど)、

ともすれば突っ込みどころもありそうな話の展開を、「突っ込みたくなる箇所とか引っ掛かりとかどうでもいいから続きを読みたい」と思わせてくれる演出。

ラストに向かって勢いよく加速していく作品はやっぱりいいなあ。

 

あと、私はあすなのおじいちゃんと天木が特に好きだったかも。雰囲気のある感じがいいなあ、と思う。

辻村さんの作品は本当に人物像が頭に浮かびやすいので楽しいです。

 

ラストシーンも爽やかで大好き。

いつかがあすなに惹かれる中学の時のエピソードも、本来のいつからしさが出ていて好きでした。

いつかとあすな、素敵なカップルになったら良いな^^

 

他の作品同様、この作品もまたしばらくしたら読み返したくなると思うので、また時期が来たらぜひ読み返したいと思います。

 

他の本も読みつつ、しばらくまた辻村作品を読み返す週間にしようかな(`v´)

 

Liebe Grüße,

Natsuru

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